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雑草のような雑念と雑考

老子 上篇 九章より

 持して之を盈たすは、其の已むるに如かず。うちて之を鋭くすれば、長く保つべからず。

 これは満ち足りた状態、栄えた状態、頂点や頂上にあることを持続させるのはやめるべきであり、あたかも鋭利な刃物がすぐに刃こぼれしてナマクラになるように、その努力は虚しいものだね。

 繁栄の頂点のあとにはすぐに凋落が待ち受けているというように勝者必衰で、その零落ぶりはむしろ速やかに訪れるとも解釈できる。
 歴史は多くの事例を提供している。中国初期の統一王朝である秦は長きに渡る戦国時代を勝ち抜いて、始皇帝でピークを極めたが、その壊滅にはそれほど時間がかからなかった。日本経済の絶頂期はバブル崩壊とともに去り、長期低迷を続け抜けだせないでいるうちに高齢化社会を迎えようとしている。それも史上初の超高齢化社会だ。
 スターダム然り、STAP細胞事件の主役然り、前の東京都知事然り、だ。

 なぜに、長期間の満足や繁栄は持続しないのだろうか?
古代ギリシア人はヒュブリス(傲慢)に対する神々の懲罰と考えた。古代的思考の典型的な結論であろう。老子はその点、身近な人工物に類比を求めている。鍛えて製作された鋭利な刃物、その切れ味を保つには多くの努力を払わねばならない。老子の視点では、人の外的な高みなどというものは、刃物という工作物のように作られた、不自然なものに例えられるわけだ。
 十分な蓄えや集中化した権力、高い地位などはその維持に見合うものだろうか?それに払う努力に見合うほどの価値があるだろうか、というわけだ。