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雑草のような雑念と雑考

時代遡行マーケティング

 現代という時代は様々な衝動に突き動かされて次を読み取りがたい時代だ。消費も然り。もはや大量消費やポストモダン消費、モノ余りなどという一くくりでは語れない。
 歴史遡行マーケティングは、べつに現代消費を支配するようなマーケティング手法ではない。それは考え方の一つだ。
静かに浸透中の江戸ブームを考えよう。そこで培われた感性は自然とその時代に流行したものに行き着く。
 その当時の、洒落本、食べ物、話題の芝居や役者、着物や小物、風流の推移を現代の商品企画に生かすというのが、歴史遡行マーケティングの着眼点だ。
 しかし、江戸時代だからといって、時代をまとめて処理してはいけない。享保のころ、天保のころ、文化文政のころ、それぞれに政治情勢、自然環境や商品流通が異なっている。着物柄ひとつでもどこのどれを選ぶかは時代考証が必要なくらいだ。

 日本中世はそれとは別な観点で現代にもってこなくてはならない。ライフスタイルといえばいいだろう。古代の身分制がこわれ、庶民の流動性が高まり、武士という新しい支配階級が登場する。天変地異がひんぱんに起こり、神仏に頼る度合いが高まる(神すらも本地垂迹して仏教に帰依するのだ)
 漂泊民が増える時代だ。芸能や職能民が土着の農民や支配層の要望に応えるかたちで、独自の存在感を強める。これは正規従業員という定住型の民衆ではなく、非定住型の非正規従業員が増大している現代社会に類似している。
温暖化の脅威は天変地異に対応する。
 であるならば、人々は定住性をますます失いながら、遊牧的なライフスタイルにシフトしてゆくのであろう。
時代遡及マーケティングは歴史心理をもとにライフスタイルの動態を通観する手続きなのである。