なぜかアメリカで太宰治の『人間失格』が静かに浸透しているという記事を読んだのは2月上旬であった。絶望名人と識者が呼んだ太宰の心中死にいたる人生と小説がセットで受け入れられている、そんな感じのようだ。それに呼応するかのように英語版wikiには心中事件の有り様まで書き込まれている。
実のところ、アメリカの格差の犠牲者は十代の若者男性であるとされる。
これは2010年代には顕著になっていた。
堤未果氏のレポートは2010年あたりからの貧困大国アメリカを教えてくれていたし、大学に進学できるとできないとで所得やありふれたはずの幸福の分岐となっている。
しかしまた、大学進学による高学歴プアという事態が進行中であることも忘れてはならない。
あまりに授業料が高く学生ローンの支払いが高負荷になっているのが実情。
スコット・ギャラウェイは扇情的な『GAFA』で著名なマーケティング系の教授だ。
そのアメリカの有名大学の問題の指摘は玩味すべきだろう。要するに、有名大学は金もうけ主義に走っているのだ。学費の膨張は若者を放棄して暴走している。
本論には関係なさげだが千葉大の加藤隆教授という聖書学の権威も学会でのアメリカ人学者の株談義に呆れていた。
ITによる成功者のストーリーはゴマンと知られている。その陰に埋もれた人生の多いことは無視されがちだ。
ビジネスの光と影はいつでもあったが、いまアメリカで起きていることは社会全体の大きな分断と亀裂の症状だ。その一因がわかもの層の苦境である。民主党があれほど混迷しているのも貧困層&わかもの層よりの左派と常識的な右派が調和できないことにある。いつの時代にあったような光と影ではない。
深い断絶が光と闇がアメリカ社会を覆っている。
【参考情報】
ホラー系の伊藤潤二のコミックシリーズが影響しているという。
人間失格以前のハリウッド映画『ジョーカー』のヒットは如実にアメリカの絶望を語っていたはずだ。原作のアメリカンコミックの愉快さなどはどこにも残っていない!
GAFAそのものも格差拡大に貢献しているのは隠しようもない事実だ。
なぜか太宰治がヒーローになった横浜を舞台にする暴力団ファンタジー?