近ごろ、腹正しく感じることがある。自分は義憤だと信じているので、「現代文明」にありかたについて苦言を呈しておきたい。
日本も含めて世界は英米の文明プラットホームの上に築かれた社会である。
二つの柱がある。ITと経済だ。
なぜ、この両者を英米圏のものと断じるのか?
ITの三大巨頭はノイマン、シャノン、チューリングだ。経済はアダム・スミス、マルクス、ケインズだ。いずれも英米圏で業績を残していることが共通だ。
補足すれば、マルクスはイギリスの資本主義について研究を大英図書館の情報をもとにしてロンドンで実行している。マルクス主義経済学は英米圏の思想なのだ。
ITと経済が英米圏の本質的な産物である別の証拠はチューリング賞とノーベル経済学賞だ。その受賞者リストの8割以上は英米圏の研究者たちだ。
これを「E帝国」と名付けようか。
はるか未来の歴史学者は20世紀はE帝国の支配が確立した世紀だったとまとめるだろう。そして21世紀の最初の四半世紀でピークアウトしたと総括するだろう。
代表格であったUSはこの20年間で劣化し窶れはてた。USのテイタラクを語ればきりがない。格差と分断、薬物中毒増大と平均寿命の減少。多くの若者はさじを投げ、少数者は権力と金に取りつかれている。コロナ感染対策では中国の後塵を拝した。
トランプ現象はその象徴の一つに過ぎない。その後を継いだのは後期高齢者の大統領だ。かつての若さとリーダーシップのお国柄は見る影もない。
老齢期のイギリスは言及するまでもないだろう。
この社会状態を生みだした二大要因はITと経済だ。技術はなんでもデジタル化しないと済まないし、経済学は市場原理の原理主義となり果てた。この傾向は揺るがないだろう。
DXとか、自由化とかの掛け声はいつまでも奈落の果てまでも残響し続けることであろう。学者や知識人たちにもほかに手だけがないから、なすすべもない。代替案なしだ。
E帝国はすでに衰退に赴きつつある。世界の他の国々も巻き添えにしていながら、没落途上にある。
だが、E帝国を改革したり、基盤を再構築できるような国家があるかというとどこにもないというのが結論だろう。
我われ、極東の辺境の日本人の学問も経済活動もいずれも英米圏の手のひらにある。思考も生活も同様だ。
どうしようもないだけに本当に腹ただしい。