自称先進国は、ますますテクノクラートと経済成長にそそのかされて、隘路に邁進していく。来し方をふり返らずして、なにがホモ・サピエンスなのだろうか?
21世紀は情報テクノロジーを原動力にする経済競争力の獲得によって、政治的な不安定さを増やすのが目に見えているではないか。
たとえば、政治のバッファーとしての中間層であるホワイトカラーは生成系AIにより、職を奪われるだろう。
リスキリングはほぼ気休めにしかならない。AIの方が安くて速いからだ。
ひとつのアネクドートを引用しておこう。
ヘンリー・フォード二世と、全米自動車労働組合の伝説的な委員長ウオルター・ルーサーが、オートメーション化されたばかりの自動車製造工場を見て回っている最中のことだ。
フォード・モーター社のCEOは、こう言ってルーサーをからかった。
「ウオルター、ここのロボットからどうやって組合費を取り立てるのかな?」
すると、ルーサーはこう言って反撃した。
「ヘンリー、ここのロボットにどうやってあなたの車を買わせるんです?」
この伝説的アネクドートの渋みは、フォード一世が労働者の賃金をあげて、自動車を購買できるようにしたという事実にある。消費する労働者がいなくなった世界でどうやって経済は回るのだろう?
情報通信技術はその中間層労働者の破壊傾性をこれまで示してきた。USがその惨めな奇跡の実例だろう。USではフラット化して国内の正規労働者が減った。労働生産性は社内システムの拡張で促進した。結果は貧困層と超リッチ層の膨れ上がったいびつな経済カースト制の誕生だった。
無制限な技術革新の拡散による利益と利権の集中があの国では進行してしまった。
同様なことを生成系AIは広汎に引き起こす可能性が高いし、あの実験国家USではすでに起きだしているのだ。かの国のモルモットは哀れだな。
下記の本はITの脅威についての先駆的な本。たかだか8年前だけど。
興味深いことにロボットや自動運転はそれほど進化していない。ロボットでのメカトロニクスはお掃除ロボットや配膳ロボが目に付くくらい。自動運転も自動車専用道路などでの限定運用だ。なぜ、限定的な発展かについては理由があるがここでは触れない。