有名人の自裁が相次ぐ。敢えて自殺の積極的意義を語ろう。
自殺者はそれと知らずして現代社会を存続させる使命を担っているのかもしれない。いわば個体維持や成長のためのアポトーシスがあるように、社会の言い知れぬ変化の犠牲者であり、かつ、貢献者なのかもしれないのだ。
自殺の社会学的分析はデュルケイムの『自殺論』で幕引きされた感がある。
その積極的な意義は極め尽くしてはいないのだと思う。自殺者への同情・反感・危機感という生存者への影響が十分に見極められていないのだ。
そうそう、ガブリエル・タルド(デュルケイムのライバル)の模倣の社会学があるにはある。自殺は模倣を呼ぶのは事実だ。殺人が模倣を呼ぶように。
それとても自殺の社会的なインパクトの一部しか掘り起こしていない。例えば、日本には補陀洛山の渡海という宗教的自死があった。嫌々ながら渡海僧にされるという場合もあったようだが、自発的にこの死の儀式に飛び込む人もいた。いまでもチベット自治区でなされる焼身自殺による僧侶の活動には、「抗議」という側面がある。では、その辺の絶望による自死には「抗議」がないのだろうか?不正や暴力への抗議活動として把握することもできるのだ。
自殺というものをネガティブだけに捉えていては何も生まない。
為政者への提案としては認可制自殺特区を設置するというのはいかがか?
その地域では自殺志願者を誘致して、その人の死に至る病を解明し、説得に応じない人には死の権利行使を認めるのだ。
そんな自殺奨励政策は言語道断という方には、何も語らないで孤独の死を遂げる人々の絶望感が理解できないのではないかと反問するとともに、他に有効策があるのかどうか、それが如何なる他者了解から導かれるかを表明してほしい。
死刑囚ですら語らいを認められているのだ。どうして現代社会の「維持者 アポトーシス」にはひとたびの語らいと死の権利を許されぬのか?
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