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雑草のような雑念と雑考

そこにヌッとある巨石

 天の磐船という言葉は石の古代民俗性を考えるうえで、避けて通れない。巨魁な石が山頂や谷間にヌッとある。天から降臨したとしか思えないその様は古代人を威圧し慄かせたのであろう。
 驚嘆と畏怖がある自然の造形物に底知れぬ作為、聖なる行為を感じ取ったのであろう。
三重県の椿大神の奥の宮にある巨石もその一つである。猿田彦という異形の古代神と結びつくのが不思議だ。
 日本書紀の神代にこうある。伊勢地方の地方神だったのであろう。

 皇孫はそこで天磐座を離れ、天の八重雲を押しわけて降り、勢いよく道をふみわけで進み天降られた。そして先の約束のように、皇孫を筑紫のくしふるたけさるたひとのかみ沼
日向の高千穂の槍触準にお届けした。猿田彦神は、伊勢の狭長田(さなだ)の五十鈴の川上に着いた。天銅女命は猿田彦神の要望に従って、最後まで送って行った。時に皇孫は天銅女命に勅して、「お前があらわにした神の名を、お前のfrにしよう」といわれ、保抑制仰の名を賜わった。だから猿女君らの男女は皆、君と呼んでいる。これがそのことのいわれである。


 1月末の山里深い椿の杜には数多くの地元の人びとが参詣に来ていた。それまでの小一時間のバスの道中ではほとんど人影もなかったのである。
 よほど親しまれ畏怖され頼りにされている神である証であろう。
猿田彦が巨石にことよせて祀られる、その深い経緯には理性的推論など及ばぬものがあるのだろう。この反合理性がなんとも好ましいのであります。



山頂奥の宮の巨石に関してはこの新書など見られたい。