神像や仏像は木製であるのが我が国の職人の定番であったのだが、しかし、それには付帯条件がつく。
民間のスモールゴッズは石像であることが多いのだ。
石に化した姥神信仰を鋭く観察し、民衆の世界像を透視したのは柳田國男翁である。また、庚申塔や石仏はどうやら境界の守護聖の名残りといえるが、それらの事象をとりまとめてゆく研究の広さと深さは折口信夫をのぞき、その弟子たちには継承されてはいないようだ。
初期の「石神(しゃくじん)問答」でその礎石は盤石に据えられている。山中共古翁との往復研究とでもいうべきこの論考は、民間神の新たな描像を彫琢しているかのようだ。
それは比較するとよく分かる。五来重の『石の宗教』は優れた啓蒙書であるが、平坦にすぎる。石にまつわる形象を幅広く集めてはいるが、過去を深く透視して民族心性に潜んでいる何者かをえぐり出すことをしていない。あるいは、取り扱うのを避けている。
自分の感じでは、民間のスモールゴッズは石像であることが多い理由は、やはり縄文期からの原始宗教の伝統が次第に多様化して、民衆の心の隅々に居場所を見出した。その形象が、庚申塚や石仏や石塔となり石神への分岐をもたらしたのだろうと思う。
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