そのジョークとはおおむね以下のようなものだと記憶する。
長年収容所にいる囚人たちはお互いのジョークを知り尽くしていた。なので34番!と囚人が叫ぶとみんなドッと笑うのだ...
本当はもう少しひねりが効いているオチがあるのだが、この部分だけで十二分に笑える。
しかしながら、なんでおかしいか説明できるのであろうか?
これはオチを知っているとジョークにならないはずなのに、それを知っている人たちが笑うといことと収容所の囚人たちが番号だけで笑いを交換しているという不条理に笑うのだとひとまずしておこう。
何度も聞いたギャグには無反応になるはずの人間心理の真逆をついているのだ。
このタイプはどうだろう。
ある酒場に見知らぬ男がやってくる。やおらトランクを開き、小さなピアノを置く。その前にカエルを座らせ、蝶々をのせる。あっけにとられる客たち。
カエルはプッチーニの『マダム・バタフライ』を弾く。蝶々はそれに合わせて歌いながら、ひらひらと舞う。
終わったところでバーテンダーが男に話す。
こんな珍しい出し物は見たことがありませんな。
それほどのことはないでしょう。実をいうと蝶々は音痴なので、カエルが腹話術で歌っているのでして
ユーモアSF好きの浅倉久志のお気に入りだったようだ。でも、どう突っ込んだらいいかわからない与太ばなしだ。奇妙すぎて笑うに笑えないといいうところか。
こういうのは「オチ」といえるほどのaha感はないものの、語り口によっては愉快な気分にさせてくれる、何度でもahaといえるホラではないだろうか?