手始めにCNNの「数字で見る「米国における銃乱射事件の実態」」を参照します。
4人以上の死傷者の事件の実態をCNNはまとめたものです、
また、こちらは2023年の数字で654件の発生を報じています。死者が出た事件数です。1日あたり117人というのは衝撃的です。
2018年までは300件程度であった(これでも多すぎでしょ)のが19年以降激増したといわれています。コロナ流行と重なりますね。
襲撃される場所の2強は職場と学校であり、犯人は白人が多いそうです。つまり、有色の移民が銃撃事件を起こしているとは言えません。
このプロファイルはやはりトランプ支持層とも重なりますね。白人はひどく逆差別を受けていると感じている。それまであった地位や身分から脱落して、それが不平等で不公正であると感じている。職場からの脱落者は職場に意趣返しするし、社会からの脱落は学校に意趣返しする。
職場への攻撃は白人層がかなり職業選択の機会損失が増大している(トランプ支持層の多くはそうです)ことから理由づけはできるでしょう。レイオフはいきなり襲い掛かり、地域によっては他の職が見つからないこともある。地域の伝統的な産業が衰退傾向にあるのはよく知られています。
教育機関への攻撃は何がそうさせるのでしょうか?
いじめ、逆差別、脱落、機械不平等、薬物中毒、病的な思い込み...各種ありそうです、
大きな原因の一つとして、アメリカの公教育制度の企業化があると思います。
CNNサイトでミシガン州が多発州ワースト3に出ています。2014年時点で65%が民営化された公教育になっていると鈴木大裕は指摘しています。チャータードスクールという制度です。これは私企業なので徹底した効率化とコスト削減を追求します。
新興国から「輸入」した教師をつかったり、1名の教師で100名以上の生徒への授業やオンライン管理は彼らのソリューションです。そうしたソリューションの結果が血の通った教育と人の訓育になるかというと大きな疑問です。
地域コミュニティの衰退とも並行して起きているのではないかと考えます。
これらは「孤独のボウリング」なる社会現象の一環です。日本ではいえば「孤独なゲートボール」なるゲートボール老人の減少が起きているのではないかな。1990年代から始まるローカルコミュニティの衰退はパットナムの研究書で分析されました。世代交代による伝統的なコミュニティの減少は世代交代によるもので置き換わるようなインターネットサービスや社会活動がある。しかし、全体として個人間ネットワーク(近隣の家庭訪問など)を減退させた。社会関係資本の質の低下でもある。
こんなパットナムの指摘は21世紀四半世紀を迎えた今ではいっそう切実なものです。
その一つの現れが銃撃事件の増大なのだと理解できるようです。同じ銃社会であるスイスではこうした社会問題は起きていないのも参考にしてよいでしょうね。
注意すべきは伝統的な「コミュニティの衰退」はUSの諸々の社会変動の結果だということです。地場産業の撤退、公教育の質の低下、大麻やオピオイド等の医療管理の不具合、新聞等の伝統メディアの喪失などなどが影響しあって「エコーチェンバーに囲まれた油断禁物のハイテク&ハイリスク社会」に変容してしまった21世紀なのでしょう。
間違ったITの使用の問題は下記の書が参考になる。NY州の教師の管理にビッグデータを用いた弊害などが取り上げられている。