アメリカ社会の分断はあの「例外大統領」であるトランプ支持層の厚みと固さで我ら島国のガラパゴス国民にもなんとなく感じ取られ、伝わってきた。
それまでは、我らは、アメリカ社会をおおらかで可能性に満ちた自由と開拓精神があり、豊かさを隅々まで体現した経済的な大国だとばかり信じていた。
それが、今では、このブログでも何度も書いた通り、少数の富裕層と成功者とそれを囲饒する高給取りの専門家たちだけが、アメリカンドリームを実現している。それに対して、中産階級は見る影もなく細くなり、貧困スレスレで生きる人々が東海岸の大都市にはあふれている。
路上生活者の多くが若者たちであるのには、眼を覆いたくなる。
この方は民主党の政策の失敗をあげつらっているが、これは偏見ではないかもしれない。かつての良きリベラリズムの伝統は内部崩壊しているようだ。
もう一つの証拠はジャック・ヴァンスのベストセラー『ヒルビリー・エレジー』だろう。ラストベルトのプアホワイトの平均的な家庭の内実が赤裸々にルポされている。
起きているのことは同じだ。自己向上の手がかりすらないアメリカンライフ、それに薬づけをもたらす補助金制度。離婚の繰り返しと家庭崩壊に育児放棄がなぜ防げないかがわかる。
この映像もショッキングだ。日本の地方都市のシャッター通りが微笑ましくおもえてしまくるくらいだ。
ラスベルトがいかに生きづらい地域に変貌していったか?
ジャック・ヴァンスはプライドを保てる職場の喪失だとしている。地場の製造業の職業機会は最初は日本、ついで中国によって喪失していった。農業は雇用を生み出していない。同様にIT(SW開発)も雇用創造とはならない。工場はある意味、農業にかわるプライドのもてる職場だったのだ。その労働環境も規則的でかつ安定的なのだ。そうした雇用が無くなった地域がラストベルトであり、東海岸の大都市なのだ。
人びとは実現したいライフスタイルへの希望を持てない。自分のささやかな職場の無気力感調査を行った経験でもそれは正しい。自立できる職業と安定性は多く人びとに必要なものだ。
夢(アメリカンドリーム)はどうか?
あのハリウッド映画のヒーローものがそれを与えるとは到底思えない。
そうなると、アメリカの巨大な都市空間は果てしない牢獄に変容するのだ。
日本社会はひたすら老熟し、色あせていくのに対して、アメリカ社会は腐敗しながら活動的だ。まるでゾンビみたいなもんだ。