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雑草のような雑念と雑考

近代西洋文明の覇権確立の流れ

 近代西洋の世界制覇の要因はいくつもの見方がある。とくに原子説に関わる一連の科学技術と人口膨張とをとりあげてみよう。
 18世紀化学者たちの研究が人間の栄養素に向けられているのはケニス・J・カーペンター 『栄養学小史』で看取される。窒素とタンパク質、熱源となる糖類や脂肪などを仕分けしてゆく。この帰結がドルトン「原子説」になる。
 原子説は動植物の飼料や肥料の製造工程をきわめて効率化することにつながる。たとえばジャガイモの生産向上がアイルランドやドイツの人口増に直結する。ジャガイモのような栽培品種を絞り込みその取れ高を向上させるだけで、どれだけの飢えを解消しどれだけ人口の再生産になったかはラリー・ザッカーマン『ジャガイモが世界を救った ポテトの文化史』のような個々の作物のサクセス・ストーリーを追えば十分だろう。
 その肥料の生産も窒素含有の鉱物や化学物質をその構成物資をターゲットすることで容易く見いだせるようになろう。肥料と土壌の関係や病虫害との闘いも原子説に基づく化学や(応用)生物学がピンポイントで障碍を克服してゆくのは西洋科学技術の成功のほんの一例でしかない。
 「産業革命」も共時的な科学技術上の勝利として衣服などの工場生産や鉱山の産出量増大を高め、交通輸送を格段のスピードアップさせた。

 かくて、世界中の有効な植物や鉱物資源を収奪してゆくパワーになるのだが、やがて20世紀前半になると地球表面上の陣取りはまさしく地表近くの西洋列強の区画はほぼ終わりになる。
 簡単に取れる資源の「地政学」的分割は見えてくる。それでも生産性向上は続いた。エネルギーの多極化が進む。
 発生源は石炭だけでなく石油と原子力が加わる。その投入先である食料生産はハーバー・ボッシュ法で窒素飼料の収量限界が克服される。大気の主成分から窒素を抜き出すことができるようになる。
 食糧生産に関するグリーン革命が世界中に行き渡るには半世紀もかからなかった。人口増大は世界中に見られることとなる。