ヨコハマ・メリーをご存知ですか。
ヨコハマの伊勢佐木町のシンボル、威厳のあるホームレスの女性。白いドウランを塗りたくり盛り場に立つ異様なオールドホームレス。
先日、たまたまドキュメンタリー『ヨコハマメリー』を見て、懐かしく思うとともに、同じ港町のサンフランシスコが奇人を愛する街だったのを連想しました。
知りませんでした。伊勢佐木通りには高齢だったヨコハマ・メリーを支える多くの人たちがいたんですね。異分子を排除しない寛容のココロというが、ヨコハマにもサンフランシスコにも共通のものだったわけです。日本では人情というらしいですが。
サンフランシスコの典型的奇人は、アメリカ初代皇帝ノートン一世です。ホームレスで誇大妄想の彼を排除しなかったサンフランシスコ市民は人間味にあふれています。市議会にはノートン一世専用の席も用意されていたと言います。彼の葬儀は盛大なものだったそうです。市民に愛されていたのですね。
永登元次郎氏のような下町の優しい人たちが、ヨコハマ・メリーの親身な世話をしていたのであります。ゲイである永登自身も心の傷があり、水商売をやりながら女手ひとつで自分を育てた母をヨコハマ・メリーに重ねていたようです。
こうした心優しき人たちは、ヨコハマ・メリーを岡山のふるさとに送りだしてあげています。彼女の直筆の手紙があるのですな。
こうした横浜下町の人情味が、伊勢佐木町の「ヨコハマ・メリー」伝説を後世に残すこととなるのでしょうね。
ただの奇人の思い出ではなく、貴重な人情世話物の伝説として。
そうそう忘れるところだった。
伝説というこのドキュメンタリーにも民俗的な奇妙なジンクスが語られている。劇場伝承というべきか。彼女が観劇する演目はアタリ興行となるというのである。乞喰(コツジキ)が神の代理としてマレビトとなるのだ。
このドキュメンタリーでは老人ホームに引き取られたメリーの素顔を最後に撮影しています。彼女の実像は整った顔立ちの上品なお婆さんでした。永登元次郎氏がおはこのシャンソンをホームで披露して二人は寄り添うようにする。彼の店シャノワールは日の出町で営業を再開したそうだ。
永登氏は2004年に世をさり、その一年後メリーも逝去されたそうです。
合掌。
こうしたドキュメンタリーが制作されるのですから、日本も成熟したと思います。
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