名門灘中の国語の担当であった橋本武は昭和25年から昭和59年まで、
三年間の中等教育を通して、同じ教材を使ったことで有名である。
その教材とは、中勘助『銀の匙』である。
それを知ったのはwikiであったが、その後、橋本の文章を読むに至って、大いに共感した。
その一節とはこうだ。
文章中の僅かな手掛かりをもとに、これを日本人としての常識教育に発展させることを考えた。たとえば前篇三での鼠算の実際、六での河童に関する諺とか伝説について、七の丑紅から十干十二支、これを用いた時刻・方位等の称呼から二十四節気に及ぶという次第。さらに十八の百人一首では暗誦を課すことはもちろん、教室でのかるた会に発展させ、私の新年の授業はかるた会で発足という習わしまで定着させてしまった。
実際に『銀の匙』の世界では明治期の民間人の生活や習慣が多く、散りばめられている。それらを一つ一つ丹念に拾い上げることで、百年前の市井の人の心ばえというのが時間を超えて到来する。そういう国語の時間を三年間味わうというのは、かけがえなき体験であったろう。
それを教育の素材として一般にも共有してほしいものだ。
- 作者: 中勘助,橋本武
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/16
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る