アメリカの現代哲学の主流は論理実証主義から別れでた「言語哲学」だ。それが日本でも受け継がれて、科学哲学系や言語哲学系の学者が存在感をもっている。
クワインはそのお陰もあり京都賞を晩年に受賞している。さて、このクワインの思想を簡単にしかも自分の関心の範囲で要約してみたい。
まず、ホーリズム。これはかつてのヘーゲル哲学や生の哲学のような全体論とはやや異なる。還元主義的に科学的命題を個別に検証することは出来ず、ノイラートの船のようにある還元不能な命題のセットでもって世界理解をしているのが実情だとする。
デュエム・クワインテーゼで決定実験はないという主張もそこから由来する。
なおも面白いのは「信念体系は神話である」という思想だ。ウィーンの論理実証主義(カルナップといったほうが良いか)とラッセルの論理主義の帰結が科学を相対化する立場を生み出したのだ。
丹治信春によれば「物理的対象もホメロスの神々と同じく文化的措定物」だという極限的な主張になる。
クォークとギリシア神話を同列におくのだ。その差異は「経験的に扱いやすい構造を生み出す道具として他の神話より効率がいい」という理由だけなのだ。かつての吉田夏彦の思想も類似であったろうと推察する(彼はクワインに招かれてハーバード大で共同研究している)
翻訳の不可能性は観察の理論負荷性を前提として主張だ。
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論理的観点から―論理と哲学をめぐる九章 (双書プロブレーマタ)
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