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雑草のような雑念と雑考

バルザックの『サラジーヌ』

 巨魁な小説家というとフランスのバルザックに指をおることにしているが、バルザックの『サラジーヌ』なる短編もかなり迫力のあるストーリー性があり、異様な運命に翻弄される人間を描いている。
 物語を読んでいただければそれでいいのだが、その意外な結末はショートショートに通じるものがある。ロマン・バルトが『S/Z』なる論評を『サラジーヌ』をもとにものした。それはそれでいいのだが、バルトのような輩は文章の曲芸師とみなしておけばそれでいい。後輩となるミシェル・セールもその曲芸を大道芸に展開しているようだ。
 つまり、名詞や文章を巧みに切りこまざいて自分勝手な解釈はいかようにでも出来る、その見本が『S/Z』だと思うのだ。こうしたアクロバットに魅了された人びとも多いであろう。
 だが、そんな曲芸よりはバルザックの『サラジーヌ』をたとえ翻訳であろうと読んだほうが百倍も為になる。