夢想する魂の彼岸に降り立つ超地上的なイメージとして、コードウェイナー・スミスの「人類補完機構」シリーズの世界は存在する。
輝かしいイコンのような神話的キャラクターがその華麗なる世界を行き交う。なぜか、不思議と強いリアリティを有するのだ。
とくに記憶に残るのはガーリィガールの猫娘ク・メルだというのは異論のないところ。ガーリィガールとはゲイシャ=もてなし嬢のことだ。
ともすると自分のク・メルは大きく変容し、イデアルなイメージと化しているのに気づく。
それには、ペーパーバック版の『ノーストリリア』カバーのク・メルが、物語り世界で活躍する艶かしく世界を変革する人物像にふさわしいようだ。
どうだね、主人公マクバンの左手に立つ彼女の雄姿は。あるいは雌姿というべきか。
そのク・メルは日本においてさらに大きく変容し、ネコミミ娘のアーキタイプに進化した。人類補完機構シリーズの影響下にある「エヴァンゲリオン」においては、ク・メルが綾波レイに昇華した。まさに、神道的アニミズムによる動物的なポストモダンなのだけれど。
さて、病弱ながら異常な繊細さをもっていたろうコードウェイナー・スミスはどう思うだろうか。
参考【USにおけるイメージ】
コードウェイナー・スミスの作品が載ったSF雑誌の表紙