ランダムなメモランダム

雑草のような雑念と雑考

LEDと陰影礼賛

 洋式便所が和式を圧倒している。
 ところでひと昔前では便所は薄暗くしっとりとした和式がいいとゆう御仁も多かった。言い方が違うかもしれない。薄明にある清潔な便所が真に心休まる場所だと夏目漱石、あるいは最近(半世紀前になるが)までは谷崎潤一郎が指摘していた。
 また、それに賛同する人々も多かったはずである。
今や、明るさがどこまでも人を追っかける。心休まる薄暗がりは迫害されるようになった。ライトアップ、イルミネーション、電飾看板がどこまでも侵入している。
 明るければそれでいいのだろうか?
 清潔さを自己主張する白い陶器と水洗いの便所が清浄なのだろうか?
 精神の内なる静寂をかき乱すLEDや液晶画面がノイズを撒き散らしている環境に馴らされてしまっている。薄暗がりの精神性を体現した文人、知識人がいなくなったし、要らなくなった荒れはてた不毛の原野に日本人は生きているのだ。



陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)