宇宙が十分に長い歳月をかけて同じ状態に戻るのを永劫回帰という。その時間を劫(カルパ)ともいう。
インド思想においてこの宇宙の再来は深くインド人の信念に染み込んだ。それを「苦」とみなす一派-仏教徒など-はその回帰性から抜け出す道を発見して、「解脱」と呼んだ。
かりにこれらのインド思考が真だとすると、ちょっと困ることが起きる。
解脱者がポロポロと宇宙から抜け落ちると、宇宙は同じ状態に戻れなくなるのだ。なぜなら、それらの人々を含んでいないまま同一状態にはならないからだ。
そうなると、仏教徒の思考をそのまま認めるなら、仏陀出現により宇宙は再起性をうしなったことになる。
では、回帰しない宇宙はどこに向かうのだろうか?そこに輪廻する衆生の運命はどうなるのだろうか?