ランダムなメモランダム

雑草のような雑念と雑考

怪著『神奈川県ほら吹き散歩』について

 中山三太郎氏による希書にして奇書『神奈川県ほら吹き散歩』は出版前から絶版という稀覯本です。

 こんな書き出しで始まります。

 そもそも神奈川県の県の名称からして間違いのもとであり、相模県というのがよりふさわしい名称である。この狭いエリアに全国で2番目の人口をかかえ、3つの政令指定都市(川崎、横浜、相模原)があり、3つの巨大軍事基地(横須賀第七艦隊、キャンプ相模原と厚木基地)がある。かつては関東一の規模を誇る小田原城も残るのだ。

 それに加えて、箱根カルデラなる巨大な火山跡が県の南側にある。

 箱根の山は富士山と喧嘩して、蹴飛ばされてできたくぼ地であるが、そうとは知らない人たちがホテルや温泉旅館や別荘を建てて景勝を楽しんでいる。まったく勝手なことである。

  うそ半分、ほら半分に真実1%というキャプションの通りの出だしである。

交通に関しての記載はこんな感じだ。

 最初の鉄道は新橋と横浜を走ったこともあり、それゆえに鉄道網もごまんとあり、県民でそれを暗唱できる人は数少ない。自分もその一人である。だが、鉄道マニアのメッカである「原鉄道博物」があるのは自慢できるだろう。当の神奈川はまともな駅としては京急神奈川駅」というみすぼらしい駅舎の各駅しか停まらないものがある。

 鉄道の説明もいいかげんである。次の説明などは名誉棄損だろう。

 戦前の小学校唱歌「いっそ小田急で逃げましょうか」で知られる小田急線は夜逃げの私鉄と言われている。

 

 実際の土地についての内容はどんなものであろう。

浦賀を例にとる。

 浦賀はペルリ提督艦隊の来訪の地である。あまり知られていないことだが、ペルリ提督は浦賀奉行所の裏で立ちションベンしている。幕府の密偵近藤重蔵により、その行為が時の将軍、徳川家茂に報告された。この事実を逆手にとって開国交渉を有利に展開したというのは、浦賀市民だけが知る歴史のウラ話である。

 浦賀の人たちはこの記事を読んだら、おそらく呆れることだろう。

 京浜急行電鉄沿いにある弘明寺といえば横浜市の古刹であるが、その取り上げ方もかなり疑問がある。

 弘明寺秘仏歓喜天は滅多に公開されない。これはY市教育委員会の某氏の圧力である。だが、駅前商店街には「福助」の看板があり、その欠を補っている。荒俣宏の『帯を解く福助』でにおわされているが、聖天歓喜佛のお姿と福助のお姿は影絵的には同じものを示しているのだ。

 

 基地コラムというのコーナーは、読んでも落胆するだけであろう。ホラばなしなのか妄想なのか境界がわからないのが困りものだ。

 県内には三種類の基地がある。軍事基地、宇宙基地、ロボット基地である。

軍事基地についてはすでに説明しつくした。相模原の宇宙基地は軍機なのであるが、

ここでその秘密の一端を書く。確かに「はやぶさ」を管制していた施設は公開されている。それは地上施設の一角を偽って公開しているにすぎない。この施設の地下には富士山火口と種子島に通じるトンネルがあり、...。

 さらに推測を付け加えると、相模原の米軍と共同で人工衛星を射程にしたレールガンを開発している。

 ロボット基地についてみなとみらい地区の巨大ガンダムが開示されているが、これも氷山の一角である。ここは東京湾の地下工場ではガンダムの装甲強化型が生産されていて、その展示を兼ねているのだ。云々

 

 足柄の金太郎伝説を真に受けている記事とか、厚木と厚木タイツの話しをポッツマン教授の本からパクっているとか、突っ込みどころ満載である。

大磯の吉田茂亭の焼失や田中丘隅の治水と盆踊りの関係などゴシップには事欠かない。

だが、著者の中山氏がほら吹きを自称しているので、それを指摘するだけ無駄なことも事実である。

 エイズ発祥の地の記念碑を立てろとか、公娼容認論とか、須佐乃とヤマトタケルを混同しているとか、疎漏と野卑な点もある。