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雑草のような雑念と雑考

思考のポトラッチとでも称してみるか

 ポーランドのSF作家にして思想家であったスタニスワフ・レムの生誕100年が2021年なのだそうだ。彼の名は一部のファン層にしか記銘されていないかもしれない。

ソラリス』の作者といえば、すこしは気づきを与えるかもしれない。

 高度な才能と知識のあらん限りを注ぎ込んで、異なる世界と人間の遭遇と相克をとことん考えた作家は珍しいだろう。『ソラリスからして、惑星を覆う液状生命体と人類とのエンカウンタを突き詰めていこうとしている。

 日常生活から隔たること甚だしい環境での人間の思考やふるまいをピルクスという男性の姿をかりて、精細に描きぬいたのが、宇宙飛行士ピルクスものである。

『大失敗』というレムの最後の作品でピルクスに別れを告げることになるのだが。

 限られた生命と人生をこのような究極の形態での人の探求に捧げる。これを思考のポトラッチと呼びたい。

 手頃な趣味やスポーツを語るのも人間であるが、地上を去ること何万里という非日常を語りだそうとするのも人間である。もとよりそのイマジネーションは了解可能であり、何らかの価値を提供するのであればポトラッチと呼べるだろう。

 レムのように多くの人びとを魅了する未知の世界の物語りの語り部となれば、その名にふさわしい。

 過去にも未来にも思考を投射して、その果実を分け隔てなく贈る行為全般についても思考のポトラッチ行為としてもいいんじゃなかろうか。

 

【参考文献】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポトラッチの源はマルセル・モースの研究だよね。