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雑草のような雑念と雑考

フィロス書房 二俣川の古本屋さん

 今を去ること30年くらい前まで横浜市の内陸部に位置する旭区二俣川の万騎が原商店街のハズレにフィロス書房なる古本屋があった。
其の名を記憶している人はそれほど多くはないであろうが、本の多さに店内の壁は埋め尽くされ、老いた店主とともに風化を重ねてゆくのみという風情があった。
あのオヤジさん、なんとなく平井呈一に似ていたなあ。「フィロス」はギリシア語のフィロソフィアに由来する。店主の心粋というものである。
 抜き取ることもできない書籍の地層の重みが他の書店と差別化戦略と言えるかどうか。今から思えば夢のような魔法の場所であった。青年期の幻のようなベールがあの埃っぽい空間をも美化している。
 それも地上からかき消すように失せて数十年経つ。いまは近代的なマンションが建つのみのようだ。
この地上でのせめてもの追憶として書出しておいた。


このブックカバーだけが存在した証明書というわけだ。